ERAD (European Radar Conference on Meteorology and Hydrology)2016 参加報告

 

ERAD2016 (http://erad2016.org/)1010日から14日の5日間、トルコのアンタルヤで開催されました。主催者によると26カ国200名の出席者があったとの こと。プログラムは、下記の10テーマにおいて口頭、ポスター発表がなされた。

Quantitative Precipitation Estimation and Hydrological Applications (oral 14+poster 26)

Mesoscale and Severe Weather (8+同23)

Calibration (6+同5)

Airborne and Spaceborne Radars (5+同6)

Operational Radar Networks and Products (12+同33)

Innovative Methods for Using Weather Radar Data in Meteorological and Hydrology (13+ 同21)

Microphysical Studies (5+同7)

New and Emerging Radar Technology (4+同12)

Use of Radar Data for NWP Models(3+同6)

なお、ポスター発表に関しては、キャンセルも多数あり、上記の6-7割 の参加であったと思われる。

発表件数からもわかるように、QPEOperational RadarおよびInnovative Methodsに多くの関 心が集められていた。QPEではレーダデータを入力とした水文モデルによる氾濫予測と 実際の氾濫との対応に関する議論などがなされていた。Operational radar で は、non-meteorological echo(虫・鳥・クラッター・風車)に 関する発表が多くあり、現業で降水マップを作る時にこれらが大きな障害になっているようである。Innovative methods では、現業のレーダなどの利用において、「このような新しい使い方をやってみた」という内容の発表が多 かった。

高橋の発表した、航空機・衛星搭載レーダセッションでは、GPMに 関係する発表3件、TRMM1件 (高橋)とSARデータから降水量を推定する方法について1件の発表があった。

 

雑感:トルコの政情などのことがあり、出席者は200名 ほどにとどまった。Turkish State Meteorological Service (ト ルコ国家気象局とでも訳すべきか)がメインスポンサーであったので、トルコからの発表 (気象局、レーダメーカ)が多数あった。新しい技術に関する発表はそれほどなかったが、欧州各国の現業レーダが偏波化されつつあるなかで生じ ている、虫エコーや鳥エコー、クラッター除去などの技術の情報交換の場として使われていた。また、北欧やスイスなど降雪が重要である地域で は、積極的に偏波レーダを活用しようとする動きも見られた。

また、固体降水の形状による散乱特性について地上でのVideo Disdrometer と複数周波数の観測の比較の発表(Handweker =カールスルーエ工科大、ら)は将来の衛星搭載レーダによる降雪推定などにおける基礎データとなると思われる。Matrosov(コロラド大学)は3周 波のドップラー速度の比からサイズ分布の推定を報告しており、これもGPM/DPRの アルゴリズム改良等に役立つと思った。

アジアからは日中韓からそれぞれ1-2名、イ ンドネシアから2名、インドから2名 の参加があり、特にインドネシアでは今後幾つかの周波数の偏波レーダを導入する計画であるとのことである。

そ の他、TRMMGPMの認知 度も高くなってきた印象はあったが、まだ、マイクロ波放射計+静止気象衛星のプロダクトをレーダのプロダクトと誤解しているものもあり、認知 度を高める工夫も必要であると思った。

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